恋した道化師ノ行方

独り言と落書きを気の向くままに更新。近頃絶賛更新停滞中。

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ボカロ海外組の、BIG-ALです。

オチ放棄、キャラ崩壊/偽物あり。
文字通りのゴミです。
それでも読んで下さるという方は追記よりどうぞ。


雨上がりの空はまだ曇っていたが、遠くには雲の傘が退いて黒い夜空が見える。
おぼろげな電灯が照らす公園を行くのは私と、そしてお供のアルだ。彼は二本の傘と四角いケーキの箱を持ち、私は仕事帰りの重めの鞄を持ち、じゃりじゃりと音を立てて公園内を歩いている。


家の最寄り駅に着いた時点では、まだ雨は降っていた。駅の屋根が雨粒を防いでくれるぎりぎりに立って、私はぼんやりと煙る景色を遠く眺めていた。そんなに強い雨ではない。このまま走って帰ろうか、ゆっくり歩いて濡れて帰ろうか、それとも贅沢にバスかタクシーか、もこもこの毛皮に覆われた猫型のバスか、といまいち真剣味を帯びない思考をゆるゆる蔓延らせながら雨を避けて立ち尽くしていると、絶妙なタイミングで携帯電話が鳴った。普段は鳴らない携帯が、控えめな音を出して着信を知らせた。鞄から出そうともたもたしている間も鳴り続けるので、電話だと思った。やっとのことでストラップを掴み引きずり出すと、表示には"自宅"とあった。

きっとアルだ。そう思った私がぱきんと携帯を伸ばして通話ボタンを押せば、やはりそれは彼だった。通話口から声が聞こえてくる。私の好きな、暖かい声が。たどたどしい発音の日本語が聞こえてくる。
「もしもし、マスターデスカ」
「はい、マスターですよ。どうしたの、アル」
「雨が降ってるので、傘を持ってお迎えに行こうかと思ったのデスが、マスター、まだ駅にいマスカ」
「……うん、駅にいる。すごい、今ちょうどどうしようかなって考えてたところだよ」
「はあ、ふふ、よかったデス。じゃあ俺、今から行きマス。待っていて下サイ」
「うん。ゆっくりでいいよ、気をつけてね。うん、待ってる。ありがとう」
ピ。
通信が終えたことを知らせる心許ない電子音の後、嗚呼アルはなんて良い子なんだろうとうんうん頷くと、自分の顔が存外ににやついていることに気づいて急に恥ずかしくなった。周囲を見回して誰もいなかったかどうか確認すると、人知れずため息をついた。


だが結局雨は止んでしまったのだ。アルが駅に到着する少し前に突如飽きてしまったかのように疎らになった雨は、濡れた地面と灰色の雲を残して過ぎ去ってしまった。消沈する彼を慰めつつ、駅前で小さなケーキを一つずつ買って、帰ることにした。
その途中の公園へ寄り道をしているのである。

湿った土の匂いがする。どこか懐かしいような、心がくすぐったくなるような心地がして、私は少しだけ笑った。目に留まる全ては見覚えのあるようでない、記憶の中のものと相似した簡易な遊具ばかりだ。幼少時はあれほど魅力的で、陣取ればたちまち全能感を与えてくれたかのように思えたそれは、今となっては何とも子供騙しな安い鉄の造形物でしかない。

しかし私は、ブランコに乗りたい衝動に駆られたときは欠片ほどの躊躇もしなかった。
まるでそこにある道を行くのが当然であるかのように、その仮初の魅惑をたっぷり含んだ遊具までの最短距離を伝ってじゃりじゃりじゃりと歩いていった。アルはおやと言ったように数歩足元を迷わせたが、従順になって付いてきた。重たい鞄を直に地面に置こうとしたが多少汚れるのが躊躇われたため、すぐ横のペンキがはげて剥きだしになった木が湿っているベンチに預けた。そしてわくわくを押し殺した奇妙に緩やかな足取りでブランコの後ろに廻り、そして足をかけた。

思ったようにバランスは取れないものだった。身体の大きさもあってか、立ったままだとぐらぐらして不安定だった。そこで初めて、私はこの一般的に立ち乗りと呼ばれる乗法が怖くてほとんど経験したことがなかったことを思い出した。道理で不慣れらしく身体が震えるわけだ。しかし、座ったとしても足がついてしまって上手く漕げないのだろう、と思った。第一に、座るべき部分が濡れている。

不格好にぎいぎい音を立てながら前後に揺らしていると、傍に立って物珍しそうに観察するアルと目があった。曇天を映してか、その瞳はいつもよりもやっとしていたが確かに輝いている。
ふと目に留まるのは、アルが持っている二本の傘だった。どちらもそれほど高価ではない、至って普通の傘だ。片方は以前から自分が使っているもの、もう片方はアルのために新しく買ったものである(この傘を二人で買いに行った際に、俺、水濡れには強いから大丈夫デスと言った彼に対して、そういう問題じゃないからと静かに怒ったことを覚えている)。
私はおもむろにブランコを止めると、両脇に垂れた鎖をひしっと掴んで台から降りた。

「ごめんね、わざわざお迎えに来てもらっちゃって。雨、その……降ってないのに」
「いえ、俺がただ間違えたデス、マスターは謝らないで下サイ」
「、ありがとう。アルは優しいね」

確かケーキ屋さんの前でも似たような問答をしたのだが、そのときは人混みのせいで会話が成り立たなかったため今一度、だった。彼はやはり謙虚な態度で、悪いのは満場一致で勝手に降り止んだ雨だというのに自らに責を置いた。
うんうん頷いて感心しながら、私はアルの前を通って禿げたベンチに重たい鞄を取りに行く。その私の背中に、アルはうたった。

「それにマスター、俺嬉しいんデス、マスターの隣で一緒に街を歩けると」

私は振り向くのも忘れてぽかんとした。ああ、この子は恥ずかしげ気もなくこういう台詞を、(振り向かなくてもわかる、きっと綺麗な顔で)言ってのけるのだ。私は思わずうっと息が詰まるのを感じた。ああ、可愛い、ぎゅっとしたくなる、可愛い。衝動を抑えて抑えて抑える。
その間数秒であったと思うが。やっと振り向いた際のアルは首をかしげて曖昧に微笑んでいた。

「ちょっと、照れちゃうけどね、そういうこと言われると。ええと、ありがとう」

他に言うべき言葉が見つからなかったのでそう心を込めて言うとアルは可愛らしく笑った。無意識にか、彼は(これは俗語であろうか)アホ毛と呼ばれる一筋だけ飛び出した前髪に手を伸ばしてかき上げたが、それがすぐさまぴょんと元の定位置に跳ね戻って来たのを見ると、あまりにも愉快だった。そして彼があまりにも純粋に嬉しそうなので、私も何かいろいろ忘れて良い気分になって笑った。

「帰ろう、アル。帰ってケーキを食べよう」
「はい、マスター」

泥のついた靴は仲良く並んで。




なんか、わからん。恋していいのかわからん。
かっこ書きの部分の、傘を買いに行く話の方も書きたかったです。
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